光棍節 独身の日
”こんこうせつ”と読むようだ。クヮンクンジェ。11月11日のことだ。
双十一(シュアンシーイー)というアイデアで、アリババが生み出した「独身の日」はなんと、2018年は過去最高の3.5兆円を売り上げたらしい。ソフトバンクも「いい買い物の日」として拡散させている。
ソフトバンクのビジネスモデル(投資戦略)にも暗雲が立ち込める。真っ赤っかだそうだ。
以下、日経 村山宏編集委員の記事は実に興味深い。
■アリババ創業者の「引退」が示すもの
中国を変えた起業家が表舞台を去った。アリババ集団を創業したジャック・マー(馬雲)氏だ。2019年9月で会長職から退いた。
アリババは1999年の中国のネット黎明期に誕生し、企業間取引(B2B)をつなぐ事業をはじめた。やがて個人間取引(C2C)サイトの「淘宝網(Taobao=タオバオ)」や企業・消費者間取引(B2C)サイトの「天猫(Tmall=Tモール)」などを開設し、中国最大のネット通信販売業者に躍り出た。スマートフォンの普及とあいまって、中国の消費者はどこにいても画面を見ながら好みの商品を注文できるようになった。
若者の心をつかむのにも長けている。11月11日を「独身の日」と命名し、毎年、この日に大バーゲンセールを展開。18年11月11日は、アリババで取引された流通総額が2135億元(19年9月のレートは1元=約15円で、約3兆2000億円)を記録した。19年3月期の連結決算は、流通総額が前の期比19%増の5兆7000億元、売上高が同50%増の3768億元、純利益が同37%増の876億元となった。その勢いはとまらず、20年3月期の売上高は5000億元と予想している。
■億万長者を輩出した中国のIT産業
アリババと同時期に中国では、ネット検索の百度(Baidu=バイドゥ)や通信アプリの騰訊(Tencent=テンセント)も勃興し、ネットビジネスは10年ごろから若者世代を中心に一気に広がった。これら3社の英文頭文字を取って「BAT」と呼ばれるほどになった。いずれもニューヨークやナスダック、香港などの株式市場に上場し、外貨資金の調達で各社の創業メンバーは一気に世界の億万長者となった。
胡潤研究院による中国のユニコーンのトップ10リストをのぞくと、モバイル決済「アリペイ」を運用するAnt Financial(アントフィナンシャル)や、若者に人気の動画投稿アプリ「TikTok」を運営する字節跳動(ByteDance=バイトダンス)、ソフトバンクが出資した配車アプリの滴滴出行(Didi Chuxing=ディディチューシン)など、日本でも名前が知られた企業が並んでいる。
■勃興するニューエコノミー
製造業に比べて立ち遅れた小売りや物流、運輸、通信、金融、メディアなどの産業を根本から変革し、中国経済のあり方や成長の仕組みを一変させた。デジタルエコノミー革命が進行し、新たな経済形態(ニューエコノミー)が誕生していたのだ。
そんな最中に、デジタルエコノミー革命の立役者であるマー氏が第一線から退いた。米国との貿易摩擦は終わりが見えず、減速傾向を強めている中国経済はどこに向かうのか。IT企業は中国経済の救世主となりうるのか。
中国のIT産業の本拠地、広東省深圳。繁華街にあった無人コンビニが閉店していた。中国最大の電気街と言われる華強北路には、1万店を超える電子機器や部品の店舗が並んでいる。IT産業を象徴する街角に無人コンビニの「百鮮GO無人超市」はあった。消費者が飲み物や食べ物を冷蔵ケースから自分で取り出し、スマホで決済する無人店舗だ。同店は17年7月から深圳で多店舗展開をはじめ、ほどなくして華強北路にも店を開いた。
■期待されたビジネスの失敗も相次ぐ
店舗内の設備はすべて取り除かれ、入り口には「店舗の借り手募集」の広告板が置かれていた。華強北路のこの店舗は無人コンビニのモデルケースとして多くのメディアに取り上げられたが、1年で閉店してしまった。これとは別に、深圳の隣の広州でも現地初の無人コンビニチェーンと宣伝された「愛士多智能便利店」が次々に店を閉じ、9店舗あった店は19年3月末で3店舗まで減った、と現地紙が報じていた。
無人コンビニだけではない。他にもITを使ったビジネスの失敗が相次いでいる。典型例は、シェア自転車だ。低料金で借りてどこにでも乗り捨てられる便利さが普及を後押ししたが、自転車の回収やメンテナンス・コストが想定以上にかかった。シェア自転車の草分け「小黄車(ofo=オフォ)」は事業に行きづまり、「摩拝単車(Mobike=モバイク)」の創業者は事業を売却してしまった。
■オールドエコノミーは低空飛行
繊維、鉄鋼、機械などオールドエコノミーと呼ばれる企業の業績は低空飛行が続く。中国が調査する一定規模以上の工業企業(オールドエコノミー業種が多い)の19年1~6月期の利益総額は前年同期比2.4%減の2兆9840億元。石油企業が利益を押し上げたが、それを除けば、多くの業種で減少した。
オールドエコノミーの代表格といえる粗鋼の生産高を見ると、19年上半期は前年同期比9.9%増の4億9200万トンを記録。鉄鋼業界は余剰生産業種として槍玉にあげられ、生産調整が続いていたが、ここ数年では見られない大幅な伸びを示した。各地方で進むインフラ開発で鉄鋼需要が増えているためだ。
中国政府はバブルを起こさない程度の住宅価格の再上昇も容認しており、資産価格の上昇で消費の意欲も復活する。鉄やガラス、セメント、建設機械などのオールド業種の賃金が増えれば、クルマや家電の消費に資金も回るだろう。
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