狂歌 佐伯琴子著
日経小説大賞受賞作。義母が入院するので、入院中の御ヒマつぶしにネット(ブックオフ)で購入。激安価格。
プロローグで偽名のパスポートを持った女性が登場する。これが誰なのかは最後の最後までわからない。
わからないが、なんとなく主人公のフリーペーパーの編集者の寺嶋きり葉であることはわかる。
ある日突然、知り合いから仮想通貨『ドラゴネット』の社長にならないかと誘われるところから話がダイナミックに展開する。
出資者の清倉龍臣と、IT技術者の宇賀神という謎の若い男とのかかわりから、大きな大きな展開を見せる。
清倉の出身が九州の金山(きんざん)であることも、この血筋の贖えない深い関係がのちのち明かされてゆく。
つまりは、人の欲望と触れてはいけない血筋の関係などを、現実に起こりそうなドラマとして描き切る。
狂歌
の意味をどうとらえるかで、この小説の読み方は変わる。時々出てくる狂歌の意味を咀嚼すると、何度も読み返したくなるような小説である。
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龍臣は親から継いだ料亭チェーンの『清くら』を放り出し失踪するが、これらはすべて龍臣の親に対する復讐だった。
彼は学生の頃愛した一華という女性を親に殺され、その復讐を長年計画していた。
龍臣がほれたきり葉も実は同じ血縁で、きり葉を自由にするために仕組んだ計画だった、という話し。
謹慎相関を肯定するような異様な展開も混ざり合い、まさに狂気的なドラマだったともいえる。
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