河のほとりで 葉室麟著 (文春文庫)

2017年に没した時代劇小説家葉室麟さんのエッセイや書評を集めた本。いわば遺書のような内容でもある。
これまで積極的に時代小説など読んだことなどなかったのだが、義母から借りた(盗んだ?)本を時々読む。
葉室麟さんの本など、彼の膨大なキャリアの中で極めてわずかしか触れていないのだが、この本を読んで”作家”としての葉室さんのアイデンティティーに加え”読書家”であり”哲学者”としての葉室さんを垣間見ることができた。

葉室さんが本格的に小説を書き始めたのは50歳を過ぎてからだそうだ。そこに至るまでに葉室さんが数々の作家の影響を受け、研究してきたかがわかる本でもある。

とにかく素晴らしかった。葉室さんの生きざまが伝わった。

頁数は少ないが、あまりにも膨大な量の情報が詰め込まれた本なので、この記事で全ては紹介できないが、キーワード的にピックアップすると・・

1、謎の人物西郷隆盛。
2、”寺田屋事件”にまつわる「歴史は時代の勝者によって語られる。」(だから敗者のドラマにも注目が集まる。)
3、万葉集の”ますらおぶり”にみるナショナリズム。(今の日本がこれ。)
4、鷗外と清張の”失われた「献身」”(第二次世界大戦の敗戦は「献身の喪失」)
5、佐藤一斎の「言志四録」に学ぶ”誠と敬”。

このくだりが最も感動的だった。A・レリスの言葉を引用して、テロリストに対する「君たちを憎まないことにした。」というメッセージは、日本の知育ではなく徳育による「心」の教育を広げるために必要なものであることが語られる。

臨済宗の「大いなる哉 心や」とは、タイトルの「河のほとり」に至る。

この辺で終わろう。終わりのないほど深い本だ。
(=^・^=)






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以上3冊が葉室麟さんの読んだ作品だ。どれも深い。そして感動的だ。
(=^・^=)

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