ちゅうがえり 鴻池朋子

かつてのブリジストン美術館が、いまアーティゾン美術館として展開しているらしい。
鴻池朋子氏の作品はそのひとつとして展示されている。


刺激的だった。今さらアートの女性も男性もないが、草間彌生さんや内藤礼さんの例に洩れず、女性らしさの視点にシンパシーを感じる。
ちゅうがえり」は彼女の歴史を振り返る、というニュアンスに受け取れた。彼女自身がこの展示のために過去の作品を何度も見直すのだが、どれも納得できず、結局ほかの誰かに選別された作品がこの美術館に配置される。
彼女のアーカイブは、常に彼女自身がどこかに出向いてその自然とそこに住まう人と接することで感じたことをそのまま展開するとい嗜好のようだ。彼女が感じ見たものをそのまま蘇らせる。瀬戸内国際美術祭で発表されたある島の物語。ハンセン病患者を隔離していたその島のけもの道を自ら再構築し、そこに作品を展示するという物語に感動する。ふと無意識に涙が溢れてくる。
様々な人との出会い、その人々の話をそのまま聞いて物語とともに編み物にして展示するという作品群にもまた大きな感動を得た。誰にでも物語はある。それは真実でなくてもいいのだ、という寛容な姿勢こそ未来を紡ぎ出すものだと思えた。子供の未来を占うような作品群。

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